■サッポロバレー勃興の「天地人」 |
天の時: |
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必然性:新しい産業の展開は技術のバラダイム変換が契機となって起こる。1970年代中頃にマイクロコンピュータが出現し、それまで
巨大化の道を辿っていたコンピュータ技術(IBM360)の流れに、誰 でもが手にして組み立てられるマイクロコンピュータ技術が急速に
展開し出した。コンピュータは巨大で、皆が共有して利用するという 考え方から、コンピュータは自分で作れる大きさと価格で、自分だけ
のもの、という考え方に転換して行った.それはコンピュータの専門 家から一般人のコンピュータ利用への復権でもあった。これが全世
界的な天の時であり、後のアップルコンピュータやマイクロソフトにと っても天の時だった. 偶然性:当時の北大において、時代の変化を感じる技術者、教えら
れなくても(従来にない技術では教師は始めから存在しない.その 点起業する場合も同じだろう.)自分達で技術をマスターしていく事
ができる基磋のある技術者(の卵)、アルバイトの形にせよ技術をビ ジネスにしていく気概槻のある学生がいて、それを容認する環境
(北大や北大を抱える札幌)等がうまくかみあった。 |
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■サッポロバレー勃興の「天地人」 |
地の利: |
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必然性:学生が卒業後地元に残り、企業の戦力となる点で考えれば 札幌に地の利は無かった。1970年代も現在も、北大の電子・情報
工学科のほとんどの学生は本州の大手企業に就職していく。北大 は学生を教育して、人材として本州に供給する基本的なところは昔
も今も変わらない。情報産業が伸びる要素としては、札幌は企業城 下町でなく(従って、Mono−CultureではなくMulti−Cultureで)加工業で
遅れをとっている結果、既存の産業の制約を受けず、加工業を飛び 越えた情報産業に移行できた。北大生の就職先の制約と生活の場
としての利点(自然の豊かさ)を結び付けようとする模索があった。
偶然性:数は少ないにせよ、上記の地の不利を地の利に変えて行 った学生や企業の経営者がいた。行政や経済界に札幌(北海道)の
経済自立を志向する部分があって、これらがマイクロコンピュータや その後のソフトウェア技術を核にして結びついた人的ネットワークが
自然発生的にできた。 |
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■サッポロバレー勃興の「天地人」 |
人の和: |
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必然性:北大には建学時から、物事を成す上でやり方は土着的であ り、既成から自由なアルチザン(職人)気質の学生を育てる伝統が
あって、技術指向の人の和がうまく作用した。さらに、札幌が適正規 模の都市で、地縁、血縁によるしがらみから自由であり、人脈を上
手に生かせる環境にあった。新しいものをすぐに取り入れる気風の 土地柄でもあり、札幌は商品や新技術のテストマーケットとして認知
されていて、新しい技術等を核にした人的ネットワークを作り出す点 でもテストの地として機能している。
偶然性:研究、ビジネス、行政的成果とそれぞれ目指すところが異 なっていたにもかかわらず、協力できる人的ネットワークが構成でき
るキーバーソンがいた。地方であるがため、余分を生かせる条件で、 生活や趣味の余裕を生かそうと指向した連中がうまく組み合わさっ
て、既成の考えに囚われることなく、自由に考えることをお互いに増 幅しながら行えた。 |
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■サッポロバレー誕生と展開は三つの自由から |
既成・既得権からの自由: |
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サッポロバレー勃興期のマイクロコンピュータ技術の展開は、既成 のコンピュータ技術やそれを基盤にして研究や仕事を行っていた部
分から自由であった。ある意味ではコンピュータの素人集団が既成 に囚われず好きな事を行っていた。 |
権威からの自由: |
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権威には重きを置かなかった連中がマイクロコンピュータという新技 術を自分達のものにしていった。この分野では北大は自由な産学交
流の場を提供したが、北大(と教官は)決して権威ではなかった。実 用的な技術に関する主導権は、学生達が興していった企業の方に
あり、大学に頼る部分はほとんど無かった。 |
失敗からの自由: |
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規模が小さなところからわずかな資金で企業を始めた事も手伝って、 失敗を恐れなかった。失敗からの自由が次の飛躍の自由につながって
企業を発展させることができ"Boys be ambitious"を「青年よ
失敗を恐れるな」と意訳できる典型例となった。 |
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■サッポロバレーの成長から学ぶもの |
結論(1) <如何にして核〔コア)をうくるか> |
(1) |
やる気のある「当事者」いないと何事も始まらない。
→「応援団」だけの集団では何も始まらない。 |
(2) |
当事者(=事業家)が楽しく「連ねる」環境の整備から‥
→ただし、単なる交流のみでは意味がない。 |
(3) |
行政的に集積場所・集積時期を確定しない。
→黒子として、きっかけ作り、環境整備に徹する。 |
(4) |
クラスタ一研究会等の取り組は、10年以上かかると考えよ。
→10年たっても現役の世代(規左30才前後)に投資せよ。 |
結論(2) <如何にして核(コア)を強く、広くするか> |
(1) |
核(コア)の特性を理解する=北海道の強みは、「素材」(含む「技術」)。
→ただし、そのまま売ると「関西人」(笑)の餌食。売るときに苦芳するよりビジネスコンセプトを詰めよ。 |
(2) |
「気づく」機会を出来るだけ多く!
→大学も有効利用すべき。ただし、当面、大学は個人の集団と心得よ。 |
(3) |
分かれる(スピンアウト)のみならず、相互補完的合併・連携も重要
→「出来る」環境をつくる.あらたなスピンアウトをつくる。 |
(4) |
単なる交流ではなく、小さくても事業につながる仕組みを!
→「信用」に基づく本当のネットワークができる=核の拡大 |
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■最後に重要なのは・・「持続する仕組み」を如何にしてつくるか? |
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